会社員ならコーヒーを飲まない人はほとんどいないでしょう!自分でコーヒーを淹れるのが好きな人もいれば、淹れたてのStarbucksを買ったり、コンビニの冷蔵庫にある缶コーヒーを買ったりと、その時の気持ちを満足させる点を見つけ出しますが、それはコーヒー中毒を癒すためのものであったり、雰囲気を楽しんだり、もしくはただ頭と眠気をすっきりさせたいだけかもしれません。
コーヒーを飲むことが私たちの日常生活のニーズとなっていることから、多くのブランドがこの戦いの中でその分け前にあずかろうとしています。激しい競争のコーヒー市場を勝ち抜くには大きな創造性を見せなければなりません。多くのコーヒーブランドを見渡すと日本のBoss Coffeeは缶コーヒーの中で素晴らしい業績を見せているブランドです。
イメージキャラクターを活用して、コミュニケーション効果倍増
日本人は奇妙なことに有名人をイメージキャラクターに起用することがたいへん好きです。テレビをつけると日本語は分からなくても日本人、アメリカ人、フランス人、さらには韓国人まで大スターが出演しているのが分かります。どの民族であるかは重要ではなく、世界的スターであればいいのです。あるいは有名人のイメージキャラクター起用は消費者との距離を縮める近道なのかもしれません。有名人には知名度があり、既定のイメージがあります。それらを商品と上手く結びつけることさえできれば短時間で消費者にその製品の性格を感じてもらうことができます。SuntoryグループのBoss Coffeeは数年前に高いギャラを払って映画『M.I.B.』の男性主役Tommy Lee Jonesをイメージキャラクターに起用しました。そして放映された「宇宙調査員」シリーズはその代表作です。
▲フランスのジャン・レノがドラえもんを演じてToyotaのイメージキャラクターを務めたReBornシリーズ
最初のCFシーンはあるレストランの中で、2人の会社員の会話から始まります。
「宇宙人がさ、人間に紛れて普通に生活してるって話知ってる?」
「知らん」
「地球の調査してるんだって。しかも映画見て人間に化けたらしくって、トミー・リー・ジョーンズにそっくりなんだって。ははは」
字幕:宇宙人ジョーンズ、地球調査中
ジョーンズの独白「この惑星の住人はどこか抜けている。ただ、この惑星の夜明けは美しい。」
このシリーズは2006年から始まり、現在まで30本近く放映されています。それぞれのCFの構造はどれも同じで、ジョーンズが様々な職業を体験して、観察した調査対象の生活の様子について意見を述べるというものです。
例:若い建築作業員編
シーン:大工仕事の現場でジョーンズは軽トラックの荷台で懸命に材木を鋸引きして大工の生活を体験していると、そのそばで親方が一人の若い大工を叱っています。「何回教えれば分かるんだ。嫌なら辞めろ。明日から来なくていいよ!」
字幕:宇宙人ジョーンズ、地球調査中
ジョーンズの独白:「この惑星では近頃の若い者と呼ばれる存在に対して、風当たりが強い。」
ジョーンズは親方の叱る言葉に気を取られて、材木を切る力に注意することを忘れ、軽トラックの荷台も切断してしまいます。翌日、同じようにクビになったジョーンズはBoss Coffeeを1本もって若者を慰めに行きます。すると若者は少し涙を浮かべながらジョーンズにこう話します。「怒られたことがなかったから、俺、怒鳴られて、ちょっと嬉しかったっす。」
ジョーンズの独白:「この星の若者は、ややこしい。」
▲ ある職業を体験して、地球人の生活を観察する
▲捕まる無認可医師のジョーンズ
他のブランドに替えられないための要件を創造する
Boss Coffeeは最初から最後まで製品の特色に触れていません。それは「おいしい」ことは売れるコーヒーの基本条件でしかないことを知っているからです。この条件さえも満たせないようであれば、どんなにすばらしいマーケティングを行っても、製品の死を早めるだけです。
コーヒーは関心度の低い商品です。各ブランド間の差異は大きくなく、商品自体の魅力のみに頼っていては十分ではありません。必ず感性に訴えかけて消費者との距離を縮めなければなりません。Boss Coffeeはこの原則を十分に把握しています。一連のターゲットの生活のあれこれのワンシーンに加えられるジョーンズのユーモアと、時に深い哲学的なナレーションに思わず同感してしまうのです。そして消費者に「本当に私のことが分かっている」という共鳴を起こします。これこそ何ものにも替えられないブランドの魅力なのです。
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作者紹介
インターネットマーケティングウォッチャー Mika
1960年代生まれ。消費性産業でのマーケティング分野で数十年勤務する。
ブランド戦略、プロダクツコンセプトから販売までのLaunchに携わる。
伝統的なマーケティングモデルに関心があり、Web2.0、Social Mediaの変化にも注目している。
作者ブログ:jabamay.blogspot.com
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