私はゲームの専門家ではないので、エキシビション参加にあたり、主な目的はメーカーが会場でどういった方法を用いて競合他社と競うのかを見ることでした。もしかするとE3の参加対象がゲーム産業に関わる人たちやゲーム業界のメディアで、一般のゲーマーではなかったせいか、台湾や東京のGame Showで見られる歌やダンス、クイズゲームに大規模なプレゼント、コスプレイヤーによるショーステージ、アイドルのイメージキャラクター等の会場イベントがこのE3では見られませんでした。
▲「会場イベント」による観衆と商品の結びつけが必要無いのならば、両者をつなぐ媒体は自然とムービーということになります。
一万元以上のチケット代を払って来場する人たちは、すでにターゲットの商品が決まっています。さらに研究討論会議に参加して、残りの時間でその他商品の新動向をチェックし、出展メーカーもまた完成させたばかりの重大なマイルストーンとなるゲームを全力でアピールするのです。
メーカーとバイヤーとの需要供給が大変明確であるため、E3に出展する各メーカーはイベントを行って集客したり、見た目だけの特殊効果に凝って欠陥のあるゲームシーンを製作したりする必要は無く、新たに、そして完成されたゲームの特色をそのまま披露すればよいのです。このため、ムービーの重要性はより高くなり、ムービーが商品と観客を結ぶ重要な媒体となるのです。しかし、これはムービーをより格好いいものにしなければいけないというわけではなく、完成したムービーがプロを引きつけられるものであることが必要なのです。そのため、ポイントはムービーのストーリーや構成、編集、特殊効果にあるのではなく、ムービーの内容が「プロが見たいゲームの特徴をきちんと表現できているか」という点にあるのです。
ある商品の各種ムービーについて、当然異なる観客、目的に対し、違った内容を設計します。例えば、ゲーマー向けのムービーは、特に発売が近い場合、ゲームのクールな点、スピード感のある点について言及し、特にテンポを強調して用いることで、ゲーマーの感情をうまく導きます。また有名人のイメージキャラクターを起用したり、CGを合成して新たなビジュアルを創造したり……。しかし、もしメーカーやスポンサーに向けてのものであるならば、ムービーの内容は製作チームのスタッフの経歴やバックグラウンド、スポーツカーがカーブを曲がる際に実際のハンドルがどのように振動するか、またブレーキ音などをどう再現するか、雨と晴れでのバトルで発生する異なるイベントなどを表現するものに変化します……。異なる観衆、目的に応じて違った情報を設計し、私たちの商品を好きになってもらえるように導くのです。
あるブースを通りすぎる際、スクリーンで流されているのがどんな商品なのかを見て、立ち止まって最後まで見るか。または中に入ってみてゲームを試してみるか。また、最新のゲームシーンを見るため、或いはプロデューサーのインタビューのために並ぶのか、或いはただ通り過ぎるだけなのか。
E3において、ムービーの内容が達成すべき目標というのは「プロにゲームの最も優れた特徴が何であるかはっきりと伝える」ことであり、また完璧な商品の方向づけであって、宣伝の方向づけではありません。ムービーが示すべきはゲーム商品が持つ最も優れた内容……編集や特殊効果は適度にとどめなければなりません。あまりに飾りたてられていると、逆に本当かどうか疑われかねません!さらに、会場では多くのメーカーがゲーマーのゲームで遊ぶ様子を直接スクリーンで流して会場にいる人たちにゲームの内容を見せており、一つのムービーを繰り返し流すといったことはしません。
異なる観衆、目的に応じて違った情報を設計し、私たちの商品を好きになってもらえるように導く。E3において提出しなければならないのは、綺麗にラッピングされた大きな霜降り牛だけではなく、やはり「近くで見て試せる」新鮮さと美しさが必要なのです。
E3のブースで主に紹介された以下の2つのムービーをご覧下さい
E3 2012 – EA Booth Walkthrough
E3 2012 – Ubisoft Booth Walkthrough
——————————————-
作者紹介
Bruce
国内外でテレビCM製作、映画配給、劇場マーケティング、電通北京事務所クリエイティブコンペチーム、ガマニア内部ディレクターに携わる。現在は株式会社ガマニアデジタルエンターテインメント商品開発部課長(セクションマネージャー)。
——————————————-