近年、ユーザーエクスペリエンスデザイン(User Experience design、略称UXデザイン)というキーワードが世界を席巻しています。それと同時に、私たちはユーザーの消費現象が次第に変化し、消費はすでに生理的な要求から心理的な満足に転換していることを発見しました。製品の開発とデザインはもう「機能と外観」を強調するのではなく、ユーザーの体験を強化し、そのうえ企業のDNAとユーザーを繋ぎ合わせなければなりません。
製品の開発とデザイン=企業ニーズ+ユーザーニーズ
1つの優れた製品は企業ニーズとユーザーニーズを結びつけなければなりません。脳科学の角度から見ると、ヒトの脳は2つに分けることができ、左脳(赤い部位)は論理力、右脳(青い部位)は直覚・感受力を代表しています。企業は非常に優れた左脳を持ち、思考・論理・判断力で以て様々なプロジェクトおよびミッションを処理して、企業の利益獲得をサポートします。そして、ユーザーは強烈な右脳を持っており、単純に使いやすく快適を感じることを求め、満足感を得ます。
どんな企業も製品を開発あるいはデザインするときに、よく企業目標とユーザーニーズの間に些細な衝突及びギャップが生じます。それはまさに左脳の理性と右脳の感性が衝突した結果です。如何にその間のギャップを減らし、最良のバランスを見つけるかは、すべての企業がぶつかる問題です。
IDEOがスペインのBBVA銀行のためにデザインしたATMのケースから、IDEOがどのように企業ニーズとユーザーニーズを結びつけたのかについて分析してみましょう。一味違ったATMのエクスペリエンスを示し、ユーザーがATMを使用するときの「プライバシー、シンプル、カスタマイズ、お金の取り出し、喜び」の全く新しい体験と気分を十分に満足させた上、BBVA銀行の企業経営理念も伝えました。
(1(1)企業の経営理念とサービスについて理解する
「理解」は製品を開発する前の課題です。プロジェクトチームはBusiness Requirementを理解しなければならず、技術・市場の区分・ターゲットの選定などを用いることができます。その後に構造の構築を行い、進捗を計る基準を定めます。
実際にBBVA銀行のもともとのATMデザインを観察し、ATMが提供する機能をまとめた。こんなにたくさんのボタンと注意メッセージを見ると、どう手をつければいいのか分からなくなる。
(2(2)実際にユーザーの使用習慣を観察する
1つの優れた製品はデスクの前に座っているだけで作り出せるものではありません。革新または製品を改善する過程において、エンドユーザーがだれであるかを考え、実際に彼らの使用目的・過程・表情それと気分を観察しなければなりません。私たちはだた「ユーザーの製品機能及び特色に対する満足度」を発掘するのではなく、さらに「ユーザーの製品を使用する本質とエクスペリエンス」をより深く発掘するのです。
デザインチームはスペイン・メキシコ・アメリカのBBVAユーザーがATMを使用する過程を取材した。同時にガソリンスタンドの自動支払装置、スーパーの自動レジ、電車の自動券売システムなどの類似設備を観察した。それは、ユーザーに最も便利で日常経験に適した操作方法を探り出すためだった。
(3(3)デザインのアイデアを出し、絶えず問題を収集・整合する
チームを越えた協力で無限のアイデア・楽しさ及び話し合いを生み出します。そして、絶えることのないアイデアと無限の想像空間を出し、最良の解決方法を見つけます。
デザインチームは観察とシミュレーションを通して、プライバシーが覗かれる問題について、いろいろな解決方法を考え出した。例えば、カバーをつけるなど。
(4(4)速やかにプロトタイプを決め、絶えず進化(Evaluation)させる
製品が模型(Prototype)作りを経ることはデザインコンセプトを具体化させる一種の実現方法で、ヒトとモノの間のリンク性を表します。そのような実現方法を「Experience Prototypes-エクスペリエンスプロトタイプ」とも呼び、異なる分野のエンジニア・クライアントあるいは上司により素早く理解させることができます。
Prototypeは単純なように見えるが、ユーザーの操作フローの問題とインターフェイス認知を実際に測りだすことができる。
デザインチームはユーザーがATMを使用するときにプライバシーが覗かれる心配をしていることを発見した。デザインチームはATMを90度方向転換させ、スモークガラスの素材を加えた。警戒を高めることができ、情報を覗かれることも防止でき、ユーザーは使用過程で快適に感じることができる。
BBAV銀行のATMのインターフェイスデザインは単純で、3つの機能要素:「カードの差込口・お金の取り出し口・タッチパネル式のサービス操作」しかなく、ユーザーに感覚的に使用させることができる。UIデザインでは、シンプル・フレンドリー・カスタマイズを強調している。ユーザーはATMのサービスを利用する時にカスタマイズしたサービス項目を選ぶことができる。両替したい時は、紙幣のイラストで両替の状況が示される。
UXデザインの目的は、製品が開発及びデザインの過程において、開発あるいはデザインチームが「立場の融合」の方法及び「共感する」(Empty)態度を通して、ユーザーの本当のニーズに耳を傾け、観察しなければならないことと、ユーザーの「Behaviors-行為」、「Personality-個性」、「Experience-経験」と企業のDNAを製品に融合させて、全く新しいエクスペリエンスを作り出し、ユーザーと企業の関係を近づかせることにあります。
筆者について
ガマニアエルゴノミックデザインセンター / T-T Yang
ユーザーを中心とした設計UCD(User-Centered Design)をグループのプロジェクトの実行や改善に応用し、ガマニアの自社製品でユーザーが最高に満足していただけるよう取り組んでいる。