海抜1,000メートル以上、住民たった78人のとっても小さな村は、どうやって多くの人から注目されるようになったのでしょうか?
ちょっと考えても分かりますが、数頭の牛と1軒の教会、そして1軒の旅館しかない、ほとんど誰も知らない所で住んでいる人と言えば、だいたい老人や子どもくらいのもので、注意をひく題材となるようなものはありません。しかし、彼らは全世界と繋がるために最も便利で最も安価な方法について賢い選択をしたのです。それは「インターネットとコミュニティメディア-Facebook」です。短い1か月の時間に村から遠く数千キロも離れた32の国々で大々的に報道され、その国で最も活躍しているファンページとなり、その注目度はレディ・ガガやジャスティン・ビーバーをも超えました。そして最近、第79人目の住人も誕生しています。
このスイスの山の上にある小さな村Obermuttenのリーダーはこう言います。「誰でもこの村のFacebookファンページのファンになってくれた友だちは、その人の人物写真をプリントして、村の掲示版に貼り付けます。」肌の色や人種に関わらず、皆平等です。唯一の条件は「『いいね!』をクリックしてくれるだけ!」です。
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このキャンペーンが始まると、この村のファン数は急速に増加し始めました。1万人近くいる世界各国のファンたちが、Obermuttenとはどんな所なのか、どこにあるのか、と興味を持ち始めました。数千人の人がこの可愛らしい村を次の旅行地に選ぶことを宣言し、すでに数百人がそれを実現させています。ちょっと見ると、これらの数字は大したことがないようにも見えますが、村の寂しい住民数に比べたら、このキャンペーンの威力のほどが感じられると思います。
この賞品も無く、抽選も無いファン募集キャンペーンは、私が以前ブログで紹介したことのある「Facebookでファンを集める新しい方法は有名にさせてあげること」にたいへん似ています。ただ違いは、「Corona Lightは最もファッショナブルなニューヨークのタイムズ・スクエアで行われ、このキャンペーンは誰も知らないスイスの山あいの小さな村で行われた」という点だけです。
「Coronaはニューヨークのタイムズ・スクエアにビルの数階分にもなる高さの巨大な電子看板を設置して、Coronaを買わなくてもビンの蓋を集めればキャンペーンに参加できます。VIPである必要はなく、ファンになって自分の写真をCoronaファンページにアップロードすれば、その写真が広告看板に映し出され、広告の主人公になってニューヨークの街角で光を放つチャンスがあるのです。」
ObermuttenとCoronaは「多くの場合、尊重されたり特別の待遇を受けたりすることは、安価ながら人の心を買収するのに非常に効果的な方法である」ことを実行したのです。
「こんなキャンペーンは本当に現地の観光を盛り上げることができるのだろうか、それともやはり一時のにぎやかさだけなのだろうか?」これは特にキャンペーンやイベントを企画するブランドオーナーか、あるいは代理店を始めとする多くの人の心の中にある疑問だと思います。あるいは角度を変えて消費者の気持ちから見たら理解できるかもしれません。
ブランドオーナーや代理店が考えるのは「どうやって人々を動かして観光に来てもらうか」です。始めにこのような角度から入ると「如何に人々を引付ける観光地や特色ある『美味しいところ』を取り出すか」という一点に全ての焦点を当てて力を入れ過ぎてしまいます。しかし残念なことに通常この種の自分で安心だと思い、美味しいところを持ちだしてくるやり方は、消費者にとって実際のところ、何の楽しみも無いのです。なぜなら、世界にはとても多くの美しい風景があるのに、消費者が注意をするに値することとは何なのでしょうか。消費者と何の関係があるというのでしょうか?
このケースにおけるブランドオーナーと消費者の意志疎通の道筋は次のようなものです。まず興味深く、消費者自身に関係することで消費者を引付けます。「あなたの顔写真が、あなたが一生現れないであろう山の小さな村に出現する」という美しいイマジネーションを消費者に与えます。そして消費者がマウスを移動して「いいね!」をクリックすると同時に、消費者はすでにObermuttenのファンページに進んでいるのです。この時、消費者は少し時間をかけてウェブページのコンテンツに目を通し、他のファンたちが何を書いているのかを見たり、掲示板に貼られている写真の画面を見たりするのです。もしこれでまだ満足しなかったら、Obermuttenのオフィシャルサイトへ進み、この小さな村の風景やどんな観光地があるかなどについて見てみるのです。消費者は興味を持って、少しずつこの小さな村のことをもっと知りたいと思うのです。こうして知らず知らずのうちに「どうやって人々を動かして観光に来てもらうか」という意思疎通の目的が完了します。
あるいはいつの日か、スイスを旅行しようと思った時、顔写真があるこの小さな村のことを思いだすかもしれません。この事は単純な観光地の紹介ではなく、消費者に行ってみようと思わせることにもなるのです!
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作者紹介
インターネットマーケティングウォッチャー Mika
1960年代生まれ。消費者志向産業のマーケティング分野に数十年間従事する。ブランド戦略、製品コンセプトから販売、立ち上げまで手掛ける。伝統的なマーケティングモデルに関心を持ち、またWeb2.0、Social Mediaの変化にも注意を払っている。
ブログ:jabamay.blogspot.com
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