もしデジタル時代と伝統的なマーケティングの決定的な違いを比べるなら、そのうちの1つに「消費者の管理権」が挙げられるでしょう。
最近見たテレビのシーンを思い出してみましょう。あなたがテレビCMが好きか嫌いかに関わらず、CMの時にチャンネルを変えたり、トイレへ行ったりあるいは消したりを除けば、少なからずCMを目にしていて自覚がないまま爆撃に曝されています。あなたが完全にそのCM商品のターゲットではなく、買った事がなくても免れることはできません。
あなたが最近インターネットを使った時の状況と比べてみましょう。たぶん丸一日ネット上にいたとして、あなたはCMを1つも目にしないのでは?それはネット上にCMがないということではなく、あなたがどこにCMが現れるのかをよく知っていて、それを背景として上手に捉え、1つもクリックしないからです。
なぜなら、デジタル時代では、管理権がテレビを見るときの受動的な受け入れから、手元のマウスで管理されるように変わったからです。もし、コンテンツが私たちの興味を引くものでなければ、私たちは無駄な時間を使ってそれをクリックしたりすることはありません!
反対に、もしあなたのコンテンツが消費者の注意を引くものなら、彼らはクリックするだけでなく、自発的によりたくさん理解しようとするでしょう。そのうえ、無料で宣伝してくれるかもしれません。
ちょうどこの現象を説明する2つの例があります。この2つはいずれも企業ブランドではなく、2人の個人です。1人目はイギリスの芸術家Greg Burneyです。彼は彼のツイッターに注目してくれるフォワローの一人一人に、独特の画風でその似顔絵(注)を描くことを誓いました。
10月31日、Greg Burneyは彼のツイッターにツイートを載せました。「これから2週間以内に“フォロー”してくれたフォワロー全員に、似顔絵を1枚描いてあげる。」とツイートしたのです。このコメントがツイートされる前、彼には70名のフォワローしかいませんでした。ネットでの口コミを経て、Gregのフォワローは瞬く間に爆発的に増えました。そして、独特の画風が元は何の生命力もない似顔絵を生き生きしたものに変え、遠く台湾にいる私までもフォワローに加わったのです。
Gregはこの#drawmyfollowersのケースを実行することで、彼に思いもつかない収穫をもたらすことを期待しています。例えば、出版社・ブランドオーナーの注目を受けることや、あるいは絵の仕事の機会を得られることなどです。
もう1名はオランダの映画監督Eddy Terstallです。彼は短編映画「Deal」を取りたいと考えていました。しかし、財政的に制限がある彼は、映画サークルの資金集めサイトCine Crowdで資金を募集するしかありませんでした。その結果、製作予算の20000ユーロの1/10しか集まりませんでした。そこで、彼はやり方を変え、ツイッターである運動を立ち上げました。
「あなたが10ユーロ(約400NTD)を寄付してくれたら、私はあなたのツイートした内容を元に、カスタマイズした10秒の映画を作り、あなたがfacebookにシェアできるようサポートする。もし60ユーロ(約2400NTD)を寄付すれば、1分まで延長することができる。」
「暴力映画を見すぎた2人の人が、映画のシーンを真似し始めた。」というツイートがありました。このようなつぶやきが映像化されると下記のようなコンテンツになります。
2400NTDで1本の映画を撮ってもらうということは、ある意味贅沢なことです。しかし、Eddyはプロの映画監督であり、役者またはカメラワークにしても一定の水準に達しています。それに、私たちはこの一生において監督に依頼して映画を撮ってもらう機会なんてそうはないでしょう!それが僅かなお金で実現するのですから!
その運動の結果は?彼は十分な資金を集めることができただけでなく、それも6倍を超え、全部で120000ユーロを集めることができたのです。
この2人は奇遇にも自分の特技を用いてネットユーザーを楽しませました。1つの面白い話題を通して、消費者にクリックする楽しみを引き起こしました。消費者の好奇心のためにより多くの創作が見られ、素晴らしいコンテンツのために彼らが提供する製品またはサービスをより知りたくなるのです。こうすれば、広告費を全くかけることなく、ネットにおいて素早く広がります。それがデジタル時代におけるソーシャルネットワークの魔力たるところです。
注:あまりにも反応がすごいため、Gregは始まって5日後に、「先着3000名の人にのみ似顔絵を描く。」とルールを変えました。遅れた人に対しては、謝罪するしかありませんでした。
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筆者について
ネットマーケティングオブザーバー Mika
1960年代生まれ。消費財産業のマーケティング分野で数十年の実務経験。
ブランド戦略、商品コンセプトの市販から発表まで携わる。
従来のマーケティングモデルに関心を持ちつつ、Web2.0、ソーシャルメディアの変化にも注目。
ブログ:jabamay.blogspot.com
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