徐志摩いわく、「多いことは良いことだ。」この言葉は「規模」が創造する美感を形容するだけではなく、この概念を約100年後のデジタル時代にも当てはまります。
Daily Monster
やると言ったことは必ず守り、しかもそれを継続できる、特に365日毎日飽きずに毎日続け、ある日突然ネタが無くなり作品が生み出せなくなることを恐れない、そんなクリエイターを私は常に高く評価しています。Stefan G. Bucherは2009年、毎日1匹異なる怪獣を創作するというクレイジーなことをやってのけました。
スピーディーに毎日創作するために、Stefanは「歯ブラシ、ストロー、筆」という特別な作画方法を開発しました。Stefanはまずインクを付けた歯ブラシを使って紙の上に自由に線を描き出します。それからストローでインクを吹き、自然に吹かれたインクに従って一筆一筆姿かたちの異なる怪獣を描きだしていったのです。創造性があると思いませんか。
1年間の計画の実行を経て、Stefanは創作した数百点の作品を集めて本にしました。最近はブームに乗って、彼のユニークな作画法を基礎に、iPhone / iPadの「Monster Maker App」が開発されています。これはUS$0.99ドルのアプリケーションで、Stefanのように気軽に自分だけのモンスターを創作することができます。
http://www.344design.com/12biggermonsters/
作画法のビデオへのリンク:
Eat、Learn、Move
オーストラリアのSTA Travel社は3人の男性に依頼して44日間で18の便の飛行機に搭乗し、38000マイルを飛び、11か国を跨いで「食・学びと移動(Eat、Learn、Move)」のドキュメントミニフィルムを創作しました。
彼らはそれぞれこの3つのテーマを濃縮して編集し、約1分間の時間で彼らと一緒においしいものを食べたり、様々な新鮮な物事を学んだり、旅の美しい風景を見ることができます。ビデオは1分間という制限があるため、正確な編集と感動的な音楽のコラージュを通じて「数が多いことは美しいこと」であるという素晴らしい映像を創り出しています。
http://theinspirationroom.com/daily/2011/sta-move-eat-learn
Moveビデオへのリンク:
New Balance 574 Clips
New Balance 574シリーズは世界限定480足で、しかも1足1足手作りされています。この480足の手作りシューズを買う人に、この靴は他の靴と違うことを感じてもらうために、New Balanceは1足ごとにその靴専属のビデオを撮影し、またポラロイド写真も撮影しています。それは多くも無く少なくも無く、計480点です。
消費者がこの靴を購入すると、靴には唯一無二のコード番号がついたポラロイド写真が付属しています。この写真は同時に交換カードにもなっていて、574のwebサイトに行けば、写真を基に対応するビデオが見つかります。専属のビデオが見られるだけではなく、ビデオのエンディングにはシューズの主権を主張できる機能があり、写真のコード番号と自分の氏名を入力すれば世界中に「この靴は自分のものだ」と宣言することができるというものです。面白いと思いませんか。
以上の3つの例は個人、ブランドが委託する個人、そしてブランド自身が実施するというそれぞれ3つのタイプを表しています。しかも数で優勢となっており、「数が多いことは美しいこと」という優位性を創造しています。このようなイベントに参加する時は、それぞれの作品の品質にはあまりこだわらず、量の美感と讃嘆させられる気力と執行力に注意を引かれるのです。
デジタル時代でなければ、このようなケースはなかなか出現しないでしょう。ブランドにとっては、100を超える作品を扱う時、その整理方法を考えるだけでも頭がおかしくなってしまいそうになり、その執行の難易度の高さはいうまでもありません。「デジタル時代のマーケティングは、質よりも量と規模の方がより重要だ」と言う人もいます。こういった目が回るほど数が多い作品ではこれまでのようにそれぞれの細部を精緻に形作っていくことではなく、全体的な美感のテンションを表現させるのがイベントのポイントです。マーケティングモデルの転換に直面している今、マーケティングは専門的能力だけではなく、大量の資料を素早く整理する能力を如何に育てるかということも、他人よりも更にプロフェッショナルになるスキルです!
——–
作者紹介
ネットマーケティングウォッチャー Mika
1960年代生まれ。消費性産業のマーケティング分野に数十年従事。
ブランド戦略、プロダクトコンセプトから発売、Launchまでを経験。
伝統的なマーケティングモデルに関心を持ち、Web2.0、Social Mediaの変化にも注目している。
ブログ:jabamay.blogspot.com
———