これまで私たちが広報に期待していたものは、私たちが工夫を凝らして企画したイベントにメディアの記者を招待し、テーマに対する彼らの興味を利用することによっていわゆる無料報道を生み、ターゲット対象が見える機会を創造して大きなメディアのメリットを勝ち取ることでした。
しかし、デジタル時代となり、マーケティング運営の方法が変わりました。広報活動もまさに時代とともに変わっています。
中でも最も主な変化はこれまでブランドが行ってきた広報活動です。ここでもっとも注意されていたのは「ニュースのポイントがあるかどうか、記者が興味を持つかどうか、メディアが取り上げるかどうか」でした。これまで消費者は主にこれらのニュース記者たちがフィルタリングした後の情報を受け取っていました。そのため、広報はメディアの興味をひけるかどうか、迎合するかどうか、これらが記者会見で成功の鍵を握るポイントとなっていたのです。
記者を満足させてメディアで取り上げられるのを待つよりも、消費者を満足させてメディアに逆に報道してもらう!
しかし、デジタル時代における消費者の情報の受け取り方は変わっています。積極的に、また自由になっています。情報はニュースによって知らされるものではなくなり、つながり合うネットワークの海と友人たちとのコミュニティの中から自分が興味を持つ内容を探し出すようになっています。多くの場合、まじめに記者会見をした時の成果よりも「メディアを飛び越えて直接消費者を満足させ、しっかりとストーリーを語る」方が有効であることもしばしばです。メディアは事件がネットユーザーたちの間に大きく広がったことによって逆に情報源を探し出し、伝えたいことを報道してくれます。
最近見た例をあげましょう。
ミラノと東京を瞬間移動
もし、いつものように地下鉄に乗ってミラノの地下鉄Moscova駅に着き、車両のドアが開いて駅に目をやるとそこは見慣れた光景ではなく、駅の中には鼻がとがってひげを生やしたイタリア人ではなく、黒髪と黄色い肌で「コンニチワ」と話す日本人がおり、駅の案内板や地下鉄の路線図と広告はどれも見てもわからない日本語、目に映るすべてが「ここはミラノじゃない!ここはミラノじゃなくて、東京の渋谷だ!」となった時、あなたはどんな反応をするでしょうか。
じつは、これはイタリアの電信会社Fastwebが光ファイバーネットワークの普及推進のために実施したイベントなのです。消費者にインターネットによる「バーチャル」な移動を体験してもらおうというのではなく、実際に自分の目と体で「瞬間移動」とは何かを体験してもらおうというものです。
Fastwebは東京渋谷の風景を忠実に再現するために一晩のうちにMoscova駅の姿を完全に変えてしまいました。120名の正真正銘の日本人を使っただけではなく、芸妓や学生、典型的な渋谷の女の子など様々なキャラクターを演じてもらっただけではなく、地下鉄が駅に到着した時の日本語の放送、駅名の表示板、そして東京現地の広告などのオリジナルの姿を再現し、さらにはキオスクや工事中などの掲示もすべて会場に持ち込んだのです。
Fastwebは広告看板にQR Codeを設けただけではなく、イタリア人でも日本の広告がわかるようにMoscova駅内に東京渋谷のチェックインポイントを設けて、ミラノにいても東京でチェックインできるようにしたのです!
予想しないサプライズと自発的な拡散を創造することがデジタル時代のマスコミュニケーションのエッセンス
このように内装に工夫が凝らされた場面に出くわしたらほとんどの人が、このことをいち早く携帯電話で撮影してFacebookやtwitterなどのコミュニティサイトにアップロードして、あらゆる友だちとシェアしようとするでしょう。更に多くの人が友だちのFacebookからこの事を知って現場に駆けつけ、またさらなるシェアをしてプラスのサイクルができあがります。現在のニュースメディアはすでに、今インターネットで最も人気のある話題をニュースの重要なソースの一つとしています。イベントがインターネットで大きな人気を呼んだことにより記者会見で発表してニュースとする必要はなくなったため、Fastwebは真の無料「報道」を勝ち取ったということになったのです。
これこそがデジタル時代の広報です。あなたはもう準備ができていますか?
ビデオ、写真ソース:YouTube、http://www.immaginapuoi.it、Fastweb Facebook
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作者の紹介
インターネットマーケティングウォッチャー Mika
1960年代生まれ、消費財産業のマーケティング分野に長年10年以上従事する。
ブランド戦略、製品コンセプトから販売、Launchまでを手掛ける。
伝統的なマーケティングモデルに関心を持ちつつ、Web2.0、Social Mediaの変化にも注意を払っている。
ブログ:jabamay.blogspot.com
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