ゾンビの使い道は、ドッキリだけでなくマーケティングにも
ゾンビ、それはこの2年で最も人気のあるキャラクターでしょう。小説からマンガ、ゲーム、映画、広告、TVドラマに至るまで、幅広い分野に余すことなく及んでいます。さらに、ゾンビと名のつくグッズが山ほどあり、何より凄いのは「消費者が見飽きることなく、逆にますます興味を抱いている」ことです。ゾンビが消費者に深く受け入れられているためか、多くのブランドでもそれをマーケティングの武器として使い始めています。
まずはHell Pizzaのケースを見てみましょう。
Hell Pizzaはピザのチェーン店です。常識的に考えれば、食べ物を売る企業は消費者とのコミュニケーションに当たって、常に「消費者の食欲をどう促すか」ということを最優先します。しかし、Hell Pizzaはそのようにしないばかりか、逆の方向を行っています。ホラー、スプラッター、バイオレンスといった気持ち悪い画面を使って、消費者に働きかけています。
Hell Pizzaは、イベントサイト、モバイルApp及び宣伝の核心であるYouTubeのインタラクティブ動画を統合しました。その動画では、1人の女の子がお店からやっとのことでゾンビの攻撃を逃れ、逃げ道のない絶望的なピンチの中、あるコンテナの上に登ります。このとき、彼女は携帯電話を取り出し、Hell Pizza Appを選び、ピザの配達を頼みます。そのインタラクティブ動画の要点は、「一刻を争う中、あなたはどうやって配達員に正確な判断をさせ、ゾンビの包囲を突破してピザを安全に女の子に届けるのか」というストーリーを描いています。動画で誤った判断を下すと、あなたはゾンビに食べられてしまいます。
Hell Pizzaインタラクティブ動画:
▲動画では、Hell Pizzaのマーケティング内容が随時現れるが、少しも違和感がない。
▲女の子がコンテナの上に追い詰められて、あなたの助けを待っている。
▲通りには人食いゾンビが溢れかえっている。生き延びた通行人があなたの助けを待っている。さあ、あなたはどうする?
Hell Pizzaは動画全体を通して、スリルを与えるだけでなく、同時に多くのマーケティングコミュニケーションの要素を盛り込んでいます。例えば、使命を必ず果たす経営理念、毎週火曜日は配達無料キャンペーン、そしてWebサイトwww.hell.co.nzなどです。重要なのは、それをとても巧妙に動画の中に溶け込ませ、無理なく紹介しており、すばらしく仕上げていることです!
ゾンビを利用したもう1つの絶妙なマーケティングの例は、The Walking Deadウォーキング・デッドです。
The Walking Deadは人気マンガを改編したアメリカドラマで、日本語訳はウォーキング・デッドになります。主人公は病院で目を覚ました後、世界が変わったことに気がつきました。人類はウィルスに感染して、みんなゾンビになってしまいました。周りを見渡せば、まともな人間は彼一人しか残っておらず、「生き延びた者を探す冒険」を始めるのでした。
TV局は今年のバレンタインデーに、ウォーキング・デッドの新シーズンを宣伝するため、バレンタインデー電子グリーティングカードをリリースしました。そのうえ、“感動的な”告白を組み合わせました。例えば、「私にとって、キミの頭、キミの体はこの世界で最も完全な組合せなのだ」などです。あなたの彼女がそのようなカードを貰ったら、あなたを骨まで愛するのか?それとも別れを告げるのか?どう反応するでしょうか?
そのほか、屋外広告では、TV局はゾンビのちぎれた手足をモチーフにしたポスターをデザインしました。ただ、そのちぎれる手足とは、下の図のように、通行人がポスターにある人物の手足を1つ1つ破ってできたものなのです。
ゾンビが出没するのは屋外だけでなく、映画館にも現れます。The Walking Deadは温かく感動的な青春ラブストーリー短編映画を1つ撮り、映画館で本編が始まる前に放映します。真っ暗な映画館の中で、みんながスクリーンに集中していると、一体のゾンビが低い呻き声を出しながら暗闇の中を手探りで映画館に侵入してきます。観客がその突如現れた招かざる客に驚いて腰を抜かした時、スクリーンの中のヒロインが突然、銃を取り出し、スクリーンの外にいるゾンビに向かって、必殺の一撃を放ちます。このバーチャルとリアルのコンビネーションには、本当に驚かされます。動画をご覧ください。
▲ このゾンビConverseは、クールすぎる!
西洋人は、小説や映画の中にしかないスリルをマーケティングの武器にして、人々の生活の隅々に出現させています。喜ばせ、悲しませ、笑わせ、怖がらせながら、ゾンビの元々の画一的なイメージをもう1つの新たな次元に押し上げているのです!
——–
筆者について
ネットマーケティングオブザーバー Mika
1960年代生まれ。消費財産業のマーケティング分野で数十年の実務経験。
ブランド戦略、商品コンセプトの市販から発表まで携わる。
従来のマーケティングモデルに関心を持ちつつ、Web2.0、ソーシャルメディアの変化にも注目。
ブログ:jabamay.blogspot.com
———